宛名物語 2

長いこと宛名印刷の仕事をしておりますと様々なドラマに巡り会います。
これもその一つです。

ある木曜日の夕方、クライアント(印刷業)の営業さんから電話が入りました。「3000枚の宛名印刷と、封筒の差出人印刷、カード印刷を月曜日の朝までに出来ますか?」という内容でした。納期が土・日を含めて3日間しかありません。しかしご注文は絶対に断らないという、創業以来の理念で迷わずお受けすることにしました。

すぐに裏面印刷とカードの印刷を懇意の印刷屋さんに依頼しました。印刷屋さんも封筒とカード印刷を3日で行わなければなりません。幸運にも印刷屋さんの手が空いていたこともあり、早速お預かりした3000件のデータの重複検索を行いました。

なんと380データが重複しており、一覧表にしてエンドユーザー様のご指示をいただくべくfaxをいたしました。ご回答は、「完全一致の重複データ以外は調査する時間がないので出さないで欲しい」とのことでした。それから不備データがいくつもありました。これは通常よくある不備データです。例えば、住所のビル名が入るセルに、電話番号が入っていたり、メモのような文字があったり、役職はあるのに氏名欄が空欄であったり、住所が途中までしかなかったりと、色々ありました。

しかし、今回は調べていただく時間がありません。問い合わせが出来るのは金曜日1日だけで、宛名印刷をする前段階でかなり問題が発生しておりました。エンドユーザー様のご決断は、「不備なデータは全て出さない」でした。そこで、出さないデータが分かるように一覧表を作成し、最後に提出することにし、ようやく宛名印刷の作業が始まりました。

弊社の宛名印刷は、1枚1枚版下を作成するようにいたしますので、1日1000枚がやっとです。日曜日の夜は完全に徹夜になりました。そして月曜日の朝、無事に宛名印刷がされた封筒とカードを運送業者に渡して作業が終了しました。ただちにクライアント様へ報告の電話をしました。大変心配されていたようでお返事を頂いた声が安心された声でした。また、印刷屋さんにお礼の電話をした時には「あの仕事のこと、今朝のラジオのニュースでやっていましたよ」と言うのです。業界2位と3位の会社が企業買収で業界1位になったとのことでした。そして引き受けた仕事が、その挨拶状だったので驚きでした。

極秘の仕事ということで、何もうかがっていなくて、納期だけが目の前にあり、カードの文面を読む暇さえありませんでした。あとで分かったのは、エンドユーザー様は買収される側で、とにかくマスコミ発表の翌日には、ご挨拶状がお得意様に届かなくてはならないし、この情報が外に漏れる恐れのある業者は使わないようにとの至上命令だったそうです。

翌日、弊社のクライアント様から電話をいただき「エンドユーザーの役員の方が、間に合って大変喜ばれており、この挨拶状を引き受けた業者さんにくれぐれもよろしくお伝えください」とのお話があったそうです。

業者冥利に尽きるお言葉と今でも胸が熱くなります。小規模業者にも人数が少ないからこそ、このような場合に信用があるのだと確信し、これからもクライアント様のご期待に添えるように業務を続けていかなくてはと思いました。

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